2011年3月7日月曜日

パリ ファッション界の大事件

 ジョン ガリアーノ問題

 ジョン ガリアーノ。此の名を聞いて「誰?」と思われるのが 恐らく 殆どの方でしょう。
「この2月まではディオールのデザイナーだった人」と敢えて過去形で云いましょう。
それも 「絶大な拒否反応を世界中に呼び起こし、ディオール社から 解雇を言い渡された人物」と。 

 事件は此の2月24日 パリ プレタポルテ コレクションを前に起きました。
 彼ジョン ガリアーノはパリの カフェで酒に酔い 居合わせた二人の人と大喧嘩。その有様を「傍に居た人が 携帯で撮った」らしい映像がマスコミに流れ ジョンの発した「反ユダヤ的な言葉」に多くの人々が驚愕・反発したのです。

 ディオール社は直ちに「謹慎」を命じ、3月1日には「解雇」を発表しました。

 「I love Hitler !」(ヒットラーを愛している!)
 「お前たちは 毒ガスで殺された!」・・・
 報道によると こうした「反ユダヤ的暴言」「人種・宗教への差別的な言葉を発した」との事。
例え酔った上 とあっても 決して許されるべきものでないのは当然です。
 ジョンは翌日「心からの謝罪」を発表したものの、今や検察当局は起訴を決定。
世界中から「完全な抹殺状態」にいるのが 此のデザイナー ジョン ガリアーノなのです。

 英国人、1985年・ロンドン コレクションでデビュー。その後1995年 LVMH社に属する「ジヴァンシー」のデザイナーに抜擢され、96年には「ディオール」のデザイナーへと進む。その間 常に 大きな注目と絶賛を集める作品を発表し続けて来た。 

 私自身は 1985年のデビュウ前より ロンドンでも コレクション取材を続けて来た為 彼の「スーパーパンク」な作品も、パリで発表した故ムッシュ ディオール的なエレガンスも、そして ジヴァンシー、ディオールでの「驚きに満ちた 幅広い味わい」等など 数々の作品を見続けてきました。
 昨年7月には コレクション後のバックステージで ロンドン時代に呉れた彼の古い名刺を見せ、懐かしさに 笑い合ったもの。
作品的には此のところの不況で 大人し目になったとはいえ その才能は「天才」と呼べるものでした。
 今回の事件でその才能は 世界から消し去られようとしています。

 改めて思うのは このブログでも紹介したイヴ サンローラン。
彼が 年4回の作品発表のストレスに押しつぶされ、神経と健康を損ね「早い死」を招いた事。
 一見 まだ若く 溌剌と見えたジョンも「当時のサンローラン以上に 強烈な圧迫感で酒に溺れた」としか考えられません。

 ファッションのデザイナーはアーティストであると同時に ビジネス面での制約を持つ身。しかも、会社から雇われているとなれば、期限内に 素晴らしい作品を作りあげる「使命」を課せられています。
 その作品に対する「マスコミやバイヤー、顧客等、世界的に広がるほめ言葉や 優遇」の一方で背負う「生みの苦しみ」。

 ビジネス的な「数字に現れる成功と、ジャーナリストや自分自身も満足する創造性を備えた作品を期日迄に完成させる苦しみ」を乗り越えるのが 彼らの役割なのです。

 
 彼を知る多くの人々は「彼には人種・宗教的差別は皆無だったのに・・」と語っていますが さて裁判の結果はどうなるか。そしてディオールを背負う「次のデザイナーは誰になるのか」。
いずれ日本のマスコミでも報じられる事でしょう。