2013年5月14日火曜日

ショーメの祭典と辻井伸行さんの演奏


 パリの伝統・格式を誇る「グラン サンク」(五大宝飾店)として名高い「ショーメ」が素晴らしいパーティーを行った。
 「ドゥ―ズ ヴァンドーム」(ヴァンドーム広場12番地)と名付けられた今回のコレクション「日本発表を記念する」パーティー。

 創業1780年、ナポレオンの戴冠式には 王冠製作の依頼を受け、ジョセフィーヌの為にも数々の宝飾品を製作しているショーメ。
広く知られる ダヴィドの絵画「ナポレオンの戴冠式」にも見事に描かれている王冠、王妃となるジョセフィーヌの輝く冠、その他の宝飾品。ショーメに依るものが多い。
彼女はショーメの「最初のミューズ」と言えよう。

 当然とは言いながら、今回のコレクションの デザインと宝石の美しさ、素晴らしい職人技の見事さは 只 見とれるばかり!! 見とれ、目を離す事さえ出来ないその豪華さ・繊細な美!!
其の全ては ヴァンドームにあるショーメのクリエイティヴスタディオで製作されている。
 

 又、パリ・ショーメ店のある、ヴァンドーム広場12番地は あの館の2階の部屋で かのショパンが最後の「マズルカ」を作曲し、肺結核で生涯を閉じた歴史的な所としても 広く知られている。

 それを記念したとあって 会場・六本木のグランドハイアット・ホテルのシェフも「ショパンにちなんだ料理を」と 工夫を凝らし素晴らしいメニュー。

 ショパンの祖国・ポーランドの国旗を模したデザインのオードブルに始まり、パリでの日々を想わせるホヮグラ入りスープ、更にはジョルジュ・サンドと共に過ごした地を想わせる南仏の仔羊、そして 12ヴァンドームと名付けたデザートにも 楽譜面が!
シャンパンは2003年ドン ペリニョン。ワインも料理と見事に調和する白、赤。正に贅沢の限り!

 それに続きモデルに依る 今回展示された「ハイジュエリー コレクション」のショ―。

正面ステージ上に据えられたグランドピアノが気になる中、「今夜のサプライズ」として紹介されたのが、あの辻井伸行さんだった。

 参加資格ギリギリ最年少・17歳でショパン コンクールに出場し「批評家賞」受賞。更に09年、アメリカの第13回ヴァン・クライバーン国際ピアノ・コンクールで 日本人として初の優勝。
併せて現代音楽(課題曲)の最優秀演奏賞も獲得。 
一躍、世界の注目を浴び、今や 世界各地で名だたる指揮者、オーケストラとの演奏活動、更に幼い頃からの 作曲活動などで 広く知られる辻井伸行さん。


 彼の演奏するショパンは 清らかに澄み切った音色で 何とも素晴らしい。

撮影 堀裕二
 中でも私にとり 思い出深いのはPolonaiseの一つ。
母が非常に好んだもの。私が3-4歳、上海に住んでいた頃の事。外出から帰ると 母はいつも「あー、疲れた」とサンルームの
長椅子に横になる。私は小さな椅子に乗り蓄音器にレコードを載せ
聴かせるのだった。この時の曲は常に「ショパンのポロネーズ」。
曲名など分からない幼い私に「ダラダラ」と呼ぶのが常だった。
この曲の最初にピアノの音を重ねる様に響く部分が続く為 こう呼んだのだろう。
 辻井伸行さんの演奏を聴きながら あの頃の母の姿が甦り、いつしか 涙が流れて居た。
辻井伸行さん、辻井いつ子さんと

 所で、此の5月の「オリコン・ランキングを見るとEXILE ATUSHI
&辻井伸行の「それでも、生きてゆく」が3位にランクされている。
お二人の震災被災者への想いが 強く感じられる素晴らしい曲。
きっと更に順位を上げてゆくに違いない。

 あらゆるジャンルでの曲作りから 演奏活動まで、大活躍を生み出した、といえるのが 伸行さんの母上・辻井いつ子さん。
彼女と同じテーブルだったこの夜。明るく、活き活きとした辻井いつ子さんに、キラキラしたオーラを感じながら テーブルの7人全員が、 又会場の全員が ご一緒に楽しんだ「ショーメのパーティー」だった。


2013年5月8日水曜日

映画「インポッシブル」




 2004年 スマトラ島沖地震で起きた 実話を基に作られたこの作品。

 感動する映画は多い。けれど「3・11」を経験した日本人にとり、この驚きや、感動は格別なもの。


 それは ごく普通のイギリス人一家の遭遇した事件。
©2012 Telecinco Cinema, S.A.U. and Apaches Entertainment, S.L.

一家の主・ヘンリーは 仕事の関係で日本に家族5人で住んでいた。

12月24日 タイのプーケットに 休暇を過ごすために訪れた一家。
南の国で 楽しく迎えたクリスマス。
ホテルのプールでマリア(元・医師)と未だ十代の長男・ルーカス、次男のトマス、そして幼い三男サイモン等と賑やかに過ごして居た時だった。

 突然起こった激しい揺れ!! 揺れに続いて 襲って来たのは 巨大な津波!!

 あっと言う間に 大きく茂った椰子の木々が倒れ、ホテルもプールも全てが流されていく。
 
 やっとの思いで手をつなぎ合ったマリアと長男のルーカス。脚に大怪我を負ったマリアと ルーカスは 「又、大津波が襲ってくるかも・・」と 残された大木にやっとの思いで登った時、近くで幼い子供の声が「パパ!」と呼んでいる。動けないらしい。
 「ルーカス 行って助けて頂戴!!」とマリア。
 「又 波が来たら僕達 死んじゃうよ!」とルーカス。
 「でも、行かなければあの子は助からない。行って!!」
マリアの言葉にルーカスは 動けないでいる幼い男の子を助け出し、木の上に。
多量の出血に弱って行くマリアの手を、優しく撫でる幼い子・・

©2012 Telecinco Cinema, S.A.U. and Apaches Entertainment, S.L.

 どうやら治まった様子に 木から降りた3人を見つけた現地の老人は 傷ついたマリアを引きずって村まで行き。戸板に乗せ、病院へと運び込んでくれる。

 怪我人で溢れている病院。
多量の出血で悪寒に震えるマリアだが、「ルーカス、ここで 貴方にも 出来る事が有る筈! それと もし、あたしの足が黒く見えたら危険の印だから看護婦さんに言ってね」と。

ベッドに横たわる人々の叫ぶ 名前を確かめ、メモしながら走り回るルーカス。
幾人かが 彼のお陰で めぐり合いを喜ぶ姿に触れる。
 やがて彼はマリアの足の色が黒くなっているのを確認。
「未だ赤いよ!」とマリアに告げ、急いで看護婦の元へ走る彼。

その頃、夫ヘンリーは、幼い二人を両脇に抱え 逃げ延びたものの、マリア達の行方探し。 疲れ果てた何人かと共に過ごして居た。
一人が持つ携帯電話を借り、親元に電話し「もう駄目だ!」と涙を流す彼に
©2012 Telecinco Cinema, S.A.U. and Apaches Entertainment, S.L.

「其れでは駄目だ!! もう一度掛けろよ!!」と バッテリーの残量を気にしながらも電話を渡す持ち主の言葉に「絶対見つけるから大丈夫!!」と再度の電話。
最悪時に見せる人間愛が 胸を打つ。

幾度かのすれ違いをしながらも やっとめぐり合った一家が迎えるのは、マリアの手術。
其の夜、着の身着のまま、傷さえ負いながらも 一家が共に居られる幸せに 感謝しつつ マリアの手術成功を祈り続ける彼等。

そして手術はどうやら成功。その後、思いがけない次のシーンが。

「さあ、もう安心して下さい。私達 ○○保険会社は シンガポールで最新完璧な医療施設での 介護に当ります!」

用意された専用ジェット機でシンガポールへと向かう一家。
離陸寸前、ルーカスがマリアの耳元で囁いたのは「あの最初に助けた幼い子が パパらしい人に抱かれて 喜んでいるのを見たよ!」。

 この作品のプログラムには 実話の元となった一家の 大きく育った息子達と夫妻の写真が載っている。

そして
「これは私達の物語では無いわ。多くの、本当に多くの人々の物語なの」と言うマリアの言葉。
 
そう、これは民族を超え 場所を越えた 世界皆の物語。
愛と絆の物語である。
感動で涙を流すのは 私だけでは無い筈。

改めて3・11に被災された皆様を想う気持ちを強くしたのだった。


614日(金)よりTOHOシネマズ シャンテほか全国公開