2011年1月23日日曜日

「アートとファッション その2」

 ルイ・ヴィトンのアート展
 
 展覧会名: “Free Fall” by Xavier Veilhan
会場:エスパス ルイ・ヴィトン東京
 住所:東京都渋谷区神宮前5-7-5  ルイ・ヴィトン表参道ビル7階
  開館時間: 12:00-20:00 
 会期: 2011年1月15日―5月8日。 
 休館日: 不定休
 入場料: 無料

パリ・シャンゼリゼのルイ・ヴィトン店7階に “Espace Culturel Louis Vuitton”が設立されて5周年。 これを記念して今回誕生したのが「エスパス ルイ・ヴィトン東京です。
 
 今回の展示作品“Free Fall”は この空間の持つイメージ 「まるで地上と天上を結ぶ様な感覚」をヒントに作られたと言います。
 この空間に立つと 透明な巨大ガラス越しに見る「空と 上から眺める外の景色や光」が 不思議な浮遊感を感じさせます。
 このエモーショナルな無重力感覚を作品に現わした と言われる今回の作品。

「この街に住む人々に敬意を表し、この空間で 自分自身と向き合える機会を提供出来たら・・」とは、アーテイスト、グザヴィエ・ヴェイヤン氏の言葉です。

 彼が 2009年 ヴェルサイユ宮殿で個展を開いた時 この宮殿内にある「大天使ガブリエルの階段」にヒントを得て制作した“Le Mobile” は 昨年ニューヨーク五番街のメゾン ルイ・ヴィトン店内に設置されています。
 
 ルイ・ヴィトンはこれまでも そのアーティスティック・ディレクター マーク・ジェイコブスが スティーブン・ストラウス、村上隆、リチャード・プリンス等、国際的なアーティストとのパートナーシップを組む事で アートとの絆を深め 「ラグジュアリーと現代アートとの関係を 深めようとするルイ・ヴィトン」の姿勢強化を行って来ました。
 
 1854年創業以来「スタイリッシュな旅の真髄」を追求し続け、今やその製品分野も カバン、バッグ類だけでなく レディース、メンズのプレタポルテから 靴、時計、宝飾・・・と大きく広げて居るのは もう誰もが良く知る事。
 世界で最も大きなラグジュアリーグループ「LVMHモエ ヘネシー・ルイ・ヴィトン」の企業である事も 周知の筈です。

 今回来日された ルイ・ヴィトン マルティエ代表取締役会長兼CEOのイヴ・カルセル氏のコメントです。
 「アートとラグジュアリーは 情熱と創造を重んじる と言う共通点をベースにして     関わり合い交流を深め、異なる二つの世界にこれまで存在する壁を打ち破って来ました。 ルイ・ヴィトンは、マーク・ジェイコブスの影響下で 常に変化を遂げており、アートへの取り組みは 留まること無く拡大し続けています。・・・」
 「私達の創造への情熱を、東京のみならず 日本全国の方々と分かち合える事を願って居ります」。

 私と 娘の彩にとり 個人的にも「最も敬愛する」カルセル氏。
加えて、娘にとっては 「結婚のチャンス」までも 作って下さった恩人です。

 今回のエスパス ルイ・ヴィトン東京オープンを記念して来日された事、彼の超過密スケジュールを知っている私だけに、これをどんなに大切に思っていられるか 強く伝わって来ました。 そして御一緒できたのは 何とも嬉しい事でした。

 「幸せを与えてくれる ルイ・ヴィトンの アート展」
一人でも沢山の方々に この幸せを受け取ってほしいものです。

 写真は ・今回のアート作品「フリーフォール Free Fall」
  ・その制作をされたアーテイストの グザヴィエ・ヴェイヤン氏、
ルイ・ヴィトン マルティエ代表取締役会長兼CEO イヴ・カルセル氏と 御一緒した私。

2011年1月19日水曜日

アートとファッション その1

 ファッションとアートの交わりの濃さは 今 始まったものではありません。
友人として、共同作業者 或いはサポーターとして ファッション・デザイナーが 様々なアーティスト達と 共に過ごし高め合って来た歴史は古くから多く見られますが、近年 益々濃い物となっています。

2011年1月に 此の東京で見られるイヴェントから 2つを御紹介しましょう。

・ シャネル主催の写真展 「バマコ美女」
  ルシール レイボーズ撮影
   1月14日―2月4日。銀座3丁目シャネルビル4階ネクサス・ホール

 銀座3丁目 シャネル店の上 4階にあるこのホールでは、音楽や写真など様々なアートの催しが ほぼ毎月行われ その大半は無料。 誰もがアートに触れ、楽しめるよう プログラムされています。
 今 行われているのが 此の写真展「バマコ美女」。
西アフリカ・マリ共和国の首都・バマコで撮った 「此の地最大の 社交の場である結婚式」に向け 美しく装う女達の写真。
 其の少女時代を アフリカで過ごしたフランス人写真家・ルシール レイボーズの撮影に依る作品達。
 見事なカタログに シャネル ジャパンの社長であり、小説家、写真家でもあるリシャール・コラス氏の記された「文章の一部」を御紹介しましょう。
 「・・・アフリカへの理解-その心を聴くこと-は、音楽なしにはできない。
彼女(ルシール)はやがて 地域のもっとも著名な音楽家と知り合い、彼らの作品に添えるポートレートを撮るようになった。その中の一人に 偉大なるサリフ・ケイタがいる。
 日本随一の作曲家 坂本龍一が、その長大なオペラ「LIFE」の1回公演を行ったとき、ケイタは出演のため日本に招かれた。そしてルシールに同行を求めたのである。・・・」 「東京のシャネル銀座ビル内にあるネクサス・ホールで 展示する為に、作品の制作を行うこととなったルシール レイボーズは、アフリカを渡り歩きながら出会った、幸せなアフリカの輝く顔を、日本の人々に見せようと考えた。
そこで選んだのが「Belles de Bamako(バマコの美女)」である。・・・
 実際、マリのバマコで、娘や姉や従姉妹、友人の結婚式を次の日曜日に控え、1週間かけて祝いの準備に励む女性達の姿ほど、ほほえましいものはないだろう。・・・」

 コラス氏の序文は 詩的に「胸躍る女達の身支度、おしゃれをプロの手に依って行う華やぎのムード」を描きだしていますが ここでは省略させて頂き、実際に御覧になる方達へ 扉を開く役目だけを果たしたいと思います。

 「酷寒」と言われるこの冬の寒さを 忘れさせてくれる、熱い写真展です。

2011年1月15日土曜日

映画「イヴ・サンローラン」



 心に深く沁み入る映画を御紹介しましょう。

 世界中の人々を魅了した 20世紀後半を代表するデザイナー イヴ・サンローラン。
彼の素晴らしい業績と並行し 終生の「公私共のパートナー」ピエール・べルジェ氏による回想と語り。
 彼らが長い年月を掛け 買い集め 楽しんだ 莫大な数の美術品の パリ・グランパレにおけるオークション終了迄を追いながら 秘蔵の写真・映像と 数々の作品を散りばめて構成されたこの映画。
「ドキュメンタリー」+「人間」の物語。 ズーンと強く胸を打ちます。 

一語一語噛みしめるように 自身の言葉で「引退表明」を行うイヴの 衰えを感じる姿で始まります。 
 次の瞬間現れるのは1957年に急死した 大デイオール帝国の「後継デザイナー」に指名され、翌年 第1回の作品発表で大喝采を集めた21歳のイヴ・サンローランの姿。 細身の長身に、はにかんだ頬笑みをたたえ、奇跡の王子様とも呼びたい程に輝くイヴ・サンローラン。デビュー・ショーの直後 感激で興奮した観客たちに追われ テラスに逃れたイヴの姿を映したこの写真。正にスター誕生の瞬間です。

 ちなみに此の作品「トラペーズ・ライン」のコレクションは、「私が初めてのパリで 観た 初めてのパリ・コレクション」。 

 「この時の 感動が その後の人生を決めた」 とも言える思い出の作品です。

  
 少年そのまま、繊細な感受性に打算や 自己利益など全く無関係なイヴ。

そんな彼を何十年にも亙り 大きな愛と知性、ビジネス感覚と政治力で支え続けて来たのが ピエール・べルジェ氏。
 徴兵され、心身症になり ディオール社から解雇されたイヴと共にメゾンを設立したのが1961年。 以来、イヴの大成功から引退、死、更には彼の回顧展その他、正にイヴ・サンローランは「べルジェ無しでは 存在しなかったかも・・」と云えそう。

 イヴのたぐい稀な才能は ファッションから舞台衣装に装置、更には独特の愛らしい女の子ルルを主人公にした漫画「お転婆ルル」を描く等 正に「天才」と呼べる反面、 余りにも繊細な神経は ストレスにさらされ お酒とドラッグに逃れ 健康を壊し 入退院を繰り返しながらも 結局は早すぎる死へと繋がってしまいました。

 ファッション好きな人にとっては 膨大な作品の与えるアイディアの凄さや驚き。 そして美しさ、サッカー競技場で行われた巨大ショーや 沢山のファッション作品に見とれ 酔う筈。
 演劇や音楽好きな人は ジジ・ジャンメールを始めとする数々の舞台衣装の煌びやかな夢にうっとりとし ミック・ジャガー達の素顔を楽しむ。

 アート好きにとっては アンディー・ウオーホールとイヴの笑いやお喋り姿や、凄いばかりの美術品、それらを飾ったパリをはじめマラケッシュ、その他の別荘やシャトウの独特の素晴らしさ 美しさに見とれ 感激する筈・・・

 変化に満ちた「美」と共に イヴとべルジェの人間ドラマは 誰の胸をも強く、大きく揺らし 何時までも 何かを残す筈。
 
 私個人としては この映画の全てが 其々の現場で体験した想い出と繋がり 様々なシーンを蘇らせ まるで自分の人生を振り返るかのように心を打ちます。
 定番と言えたインターコンチネンタル ホテルでのコレクション。

 カトリーヌ ドヌーブや ジジ・ジャンメール等多くのスターたちが姿を見せた華やいだ雰囲気のショー。
 フィナーレ直後にバックステージでマイクを向けた時の彼の優しさや声、頂いたコメント付きのサイン等ナド。
 又、彼のメゾンで御目に掛かった母上のお姿、彼の仕事デスクの上に飾られた金色の麦の穂束。
 数々の記念パーティーの風景や華やかさ、98年サッカー ワールドカップ大会直前の300人のモデルに依る大ショー、ポンピドーセンターで行われた生前の彼が姿を見せ、パリ中の有名デザイナー達も出席した回顧展・・・

 そして 昨年夏にパリで観たYSL衣装展等ナド・・・もう 数えきれない多くの想い出が次々と浮かんできます。

 改めて手元にあるコレクションの招待状や 常に「LOVE」の文字を描いたクリスマスカード、パーティーの時に頂いた刷りもの等など 感慨深く眺める私。

 今は無き天才の「人間としての苦悩」を想い 「外面の華やかさとは 対照的な内側」が誰にとっても「大きな衝撃と共感」を与えてくれる筈。

2011年の初めに 私が強く推薦したい映画こそ この「イヴ・サンローラン」です。

 公開 4月よりTOHOシネマズ六本木ヒルズ。ヒューマントラストシネマ有楽町他にて全国公開
 配給:ファントム・フィルム
 公式サイト:http://www.ysl-movie.com