2010年7月29日木曜日

サンモトヤマ 茂登山氏  フィレンツェでダブル受賞

 銀座並木通りに大きな店を構える「サンモトヤマ」は「ブランド意識発祥の店」とさえ言える老舗。
現在日本で見られる「ブランド真価を認め、広めた」人物こそ この茂登山長市郎会長。
 
本年6月、その茂登山氏がイタリア・フィレンツェに於いて 最も格式ある「アポロ賞」を授与され、又「フィレンツェ市名誉市民賞」をも受けられた。
「ルネッサンス発祥の地」として知られ、この上なく美しい、アートと歴史の街・フィレンツェ。
ここの「城壁扉を開ける四つの鍵」が「名誉市民」の印、初めての日本人として受けられた。
又、「アポロ賞」とは 文化 芸術等の分野で活躍した人に与えられ、「9人の街の守護女神」とそれを率いる神「アポロ」の名が付けられた賞。

茂登山氏に贈られたのは この最高の「アポロ賞」。何しろマリア カラスや シャガールさえ受けた大変な賞である。
地元の各新聞は 大きなカラー写真入りで今回の受賞について取り上げた。

 受賞の大きな理由はフィレンツェの象徴ともいえる 大きく美しいサンタ マリア デル フィオーレ大聖堂にあるサンジョヴァン二洗礼堂の巨大な「天国への扉」のレプリカを制作寄贈した事。
この扉は1966年のフィレンツェ大洪水、その後の空気汚染の為、大規模な修復と保管が必要となり 90年に 大聖堂内の美術館に保管されることになった。
 多くの観光客は外された「天国への扉」の前で「無残に貼られた板戸」に大きな落胆を味わったものである。そこに純金メッキし本物と全く同じレプリカを制作 寄贈したのが茂登山氏であった。 
 彼がグッチを始めフェラガモ、ロロ ピアーナ、エトロ、トラサルディ・・・など多くのイタリー製品を日本に紹介して20余年が経た1990年の事だった。
 「たまたまこのギベルティによる10枚のパネルの型が残されているのを知って制作依頼した」と茂登山氏。
このパネルにはアダムとイヴの創造など旧約聖書から取った題材が彫刻され、ミケランジェロをして「天国への門にふさわしい!」と言わしめた事からこう呼ばれるようになったという。

 「イタリーでは法律上 金メッキが禁止されている為 フランスまで運んでメッキした・・」など完成までの御苦労がしのばれる。
 味気ない板張りに代わり、昔ながらの感激を多くの人々に贈った功績。又何億もの費用を惜しまず、寄贈した事へのフィレンツェの感謝、そしてフィレンツェの誇る名品を日本に紹介した事等ナド。
 それを「私はこの街から多くの恩寵を受けた。恩返しが出来た事に感謝する」と 当然のように話される茂登山氏。

 「扉の寄贈20周年」に当たる今年6月12日 贈賞式当日、茂登山氏の為に「特別の時以外は開かない扉」が開けられ、ヴェッキオ宮殿「500人の間」で市長に依る式典が執り行われたという。

 今年89歳になられる彼。その若々しさと情熱は以前と全く同じ。御一緒させて頂き、昔の話など、幾度にも亙り伺ってきた私だけに、今回の御受賞は 何よりも嬉しいものであった。
又、美しいものを愛し、より多くの人にこの幸せを分かちたいと考えられる彼に 改めて心よりのお祝いを贈りたいと思う。

 写真は・フィレンツェのシンボルの一つ「サンタマリア デル フィオーレ大聖堂」
・「美しい彫刻パネルの天国への扉」の前で「花の大聖堂管理局長ミトラノ女史等と 89歳とは思えぬ茂登山氏。 
・「アポロ賞」「名誉市民の鍵」を前に茂登山氏と私

2010年7月22日木曜日

シャネルの宝石・羽根

 「本物の宝石以上に美しい“コスチューム ジュエリー”」(所謂イミテーションのアクセサリー)。
生前 常にこう云い続けて居たココ シャネルがたった一度だけ本物の宝石をデザインしたのは1932年、彼女が49歳の事。
その売り上げの全てを 慈善団体に寄付した彼女。 しかしその一方で「私がダイヤモンドを選ぶ理由、それは密度の濃さ。最も小さなものでありながら、最も大きな価値を持っているから」と、云い続けて来たのがココ シャネルであった。
彼女の「宝石類への好み」を伺える言葉である。

この1932年の作品には現在、広く知られる「星」「太陽」「リボン」等のモチーフがあり、その後様々なデザインへと発展されて来た。
所が たった一つだけ、今まで復活を見て居なかったのが「羽根」のデザイン。それが今回のメインテーマになっている。
 ホテルに届いた小型封筒からは 白いオーストリッチの羽がホロリとこぼれ落ち 「シャネルの羽根・プリュム ドゥ シャネル」とテーマを刻まれた招待状。

 ブローチとしてもティアラとしても使えるしなやかな作り。加えて部分的に離して他の使い道も用意されているのは さすがシャネルらしい「おしゃれと合理性」の合体と云うべきか。 
正に「自由とクリエイティヴ、モダンな現代精神」そのもの。
 胸元に飾ると体に優しく沿い 更に美しい輝きを見せる。何と云う輝きと、しなやかな作り!! このしなやかな動きがダイヤの輝きを より大きなものにする。

 今回パリで観たのは数種類のデザイン。この9月に行われるパリ グランパレでの「アンティック ビエンナーレ」への出展が予定されているが 未だ全製品30点余の全てが完成している訳ではない。
 この段階で観たとはいえ、満足度十二分の歓びを呉れたハイジュエリー「シャネルの羽根」であった。

2010年7月18日日曜日

パリ オートクチュール コレクション

 この7月 暑いパリで観たオートクチュール・コレクションから特に印象的なものを拾って御紹介。
但し 詳細は、美しい映像の「ファッション通信」8月15,22の2回にわたる放送でじっくりと御覧頂きたい。(BSジャパン土曜夜11時、再放送は日曜朝)

・「シャネル」 シャンゼリゼ通りコンコルド寄りに 大きく構えるグランパレのドーム型ガラス屋根。1900年パリ万博用に建てられ、当時の世界を驚かせた「パリを象徴する建物」の一つ。
ここで行われたのが 今回のシャネル・オートクチュール・コレクション。
 明るく広い会場。大きな円形ステージ上には金色の「巨大なライオン像」。3階建てビルほどもある大きさである。「獅子座の女・シャネル」を想えば 頷けるというものだが。今回最大の見どころはスカートや袖、ブーツ等など あらゆる部分で見せる「丈や長さの新しい表現」と「伝統技術の発揮」だろうか。秋冬シーズンに欠かせないコートは 暖かそうな膝下丈だが袖は5分丈、中に着るのは膝上丈、組み合わせるブーツはふくらはぎ半ば。
5分丈袖からは 下に着る服との色合わせが、或いは幾つも重ね使いするバングルが手首を飾る。 オートクチュールならではの手の込んだ刺繍は コートにさえあしらわれ、華麗かつ豪華。夜のドレスも 多くは膝上の短かめスカート丈。組み合わせたブーツにさえ、同じ柄のゴージャスな刺繍が使われているが 印象は非常に軽やかで若々しい。最後のお楽しみマリエ。何と花嫁の手を引くのはライオン姿の新郎。獅子座を強調し ココ シャネルを強く印象付けた。
 「誰もが着たい」「新しい提案」「楽しさ」・・・価格を考えねば全ての女性に「身近さ」を感じさせながらも、新鮮な提案を欠かさない才人・カール ラガーフェルドに依る 魅力溢れる「シャネルのコレクション」であった。

・「ヴァレンティノ」 
ヴァンドーム広場にある社屋のサロンを幾つか使用し、昔そのままの形式で行われたショー。デザインするのは引退したヴァレンティノを引き継ぐM.G.キウリとP.P.ピッチョーリのデュオ。このメゾンの伝統と言える華やぎを 更に 大幅に取り込みながらも「若さ」を広げたとはもっぱらの評。
 花を想わせる布地の扱いが 短いスカート丈のドレスに女の艶と愛らしさを加え、楽しませてくれる。
 随所に現れる鮮明な「赤」は ヴァレンティノのシンボルカラー。特にショーの最後を飾るのは「深紅のイヴニングドレスが伝統」とさえ云われてきたこのメゾン。
今回も白、黒と共に赤が使われ 世界から集まる顧客やジャーナリスト達を喜ばせた。

・「クリスチャン ディオール」 
会場は「考える人」の彫刻等で知られるオーギュスト ロダン美術館。ここは広い庭園の美しさでも有名な上、独特の静寂さと彫刻類が放つオーラのせいか、これまでも度々コレクションのショー会場に使用されてきた。
 庭に透明なテントを建て 庭園の緑や花を見せながらのコレクション。
デザインする人気者・ジョン ガリアーノのメインテーマは「花」。
 ランウエイ正面には大きく鮮明な色の花。其処に現れるモデル達はさながら花そのもの。顔からヘヤー迄 透明なラッピングペーパーで包まれている。
使用されたのはもっぱら花の色。花弁を想わせるシルエットや生地扱いなど。
 常に驚きと「仮装舞踏会」のような楽しさを放つガリアーノならではの作品。
しかもこのメゾンの創始者 ムッシュー ディオールの好みをしっかりと引き継ぎ、現代的、彼的に解釈した作品。
 世界で僅かに残る一握りの「超リッチ顧客」と 我々多くの「見て楽しむ」人々を喜ばせ、ファンタジーと夢を贈ってくれたディオールである。

2010年7月14日水曜日

今回のパリ取材

 暑い暑い今年のパリ。昼間は文字通りの「カンカン照り」。
そんな中 忙しく、でも最高に楽しく幸せ気分一杯で行ってきた今回のパリ取材。 主目的は雑誌「家庭画報」10月号(9月1日売り)の為でした。
内容については「家庭画報」でご覧いただくとして、私にとり、何とも感銘深い想いを噛みしめた今回だったのです。

 改めて思い出すのは、今から37年も前の事。
それまで何年間か せっせとお金を貯め 毎年ヨーロッパやニューヨークなど、「世界各地を旅する事」に熱中していた私。その都度 可能な限りパリに足を止め「コレクションを見る」のが大きな歓びでした。
 「こんなに素晴らしい美しさや感動! より多くの日本の方々にその源を 直に伝えたい!」と考え始めたのはジャーナリストの私にとり 極く当然な事。
 所が60年代終わりから70年代初めの当時は マスコミの誰もが「そんな事 受けてくれる筈が無い。不可能に決まっている!」と思い込んでいたのです。
どの雑誌の 誰に話しても、全く関心を示してくれません。
 そんな矢先、たまたま「編集長の交代」が行われた「家庭画報」で 「出来なくても気にせず、とりあえずやってみて」と取り上げて下さったのが新編集長でした。
只、「実現不可能かも・・」と全員が考えて居ただけに、「取材への同行者無し、カメラは現地の人」が条件。
 パリに住む友人が「主人が長期出張で不在だから 我が家に泊まったら?」と云ってくれたのを幸いに 彼女宅に泊まり、ついでに「ドライヴァー役」まで引き受けてもらって行ったのが「初めてのパリ本店取材」だったのです。
 現在では 全く信じ難い事ですが、これが日本の全マスコミ・ファッション誌で、「本邦初」のパリ現地取材であったとは!!!

 「シャネル」「エルメス・「セリーヌ」。どのブランドも大歓迎し 大きな好意を以て応じ 協力してくれたのは云うまでもありません。
以来この「一流店(ブランドと云う呼び方さえ無かった当時)現地取材」企画はパリだけでなくイタリーから北欧にまで 何回か続きました。
 其の数年後、TVでも同じことを自費で行った事は又の機会に書きたいと思いますが、そんな状態で始まり 現在へと続いてき来た「私の仕事とその歓び」。 
今回は特に 感慨深く、大いに楽しんで来ました。

 詳細については ぜひとも「家庭画報10月号」でご覧いただきたいと願って居ります。 ちなみに 現在店頭にある「家庭画報8月号」の「名品の条件」という特集でも 私の考え方を御披露させて頂いております(P117)。 ご覧頂けると幸せです。

 次は今回のパリで拾った数々の感動、歓びについて綴ってゆきたいと考えています。

2010年7月1日木曜日

パリ出張

 7月のパリは 「オートクチュール コレクション」シーズン。
加えて今年からは パリ・ヴァンドーム広場に店を構えるフランス最高級宝飾店のプレゼンテーションも行われます。
 それらを見る為 パリ出張予定の私。このブログも10日間ほどは御休みとさせて頂きます。
 帰国後には おみやげ話その他、沢山のニュースや感想をお伝え出来る筈。 
7月半ば過ぎ、どうぞ又 このブログを御覧下さいませ。お楽しみに。  大内順子