2010年6月27日日曜日

 シャネル秋冬コレクション

そびえ立つ氷山と流氷に水。会場全体は正に北極。
其処に繰り広げられたのが シャネルの秋冬作品のショー。
 長い毛足のロングブーツに 寒さを防ぐコートやジャケット、ミニスカート等。
「北国生まれの私は雪が好き。今回はカントリーとファームをテーマに取り上げた」とは デザインする天才ドイツ人クリエイター・ カール ラガーフェルドの言葉。

 さまざまに使用されている毛皮、実は全てが人工の「フェイク ファー」。カール ラガーフェルドはこれらを「ファンタジー ファー」と名付けている。 見方によっては北極の氷が象徴する「地球温暖化」、そして人工の毛皮は「国際生物多様性年」に応えるなど 全ては「エコ」意識の現れとも受け取れるのが 今回の作品。
 エスニックモチーフのニットのパッチワーク、ツイードやチュール等様々な素材と「ファンタジー ファー」の組み合わせが 暖かさを感じさせ 何とも新鮮。
 アクセサリーとして 何連ものパールにアイスキューブをイメージしたパーツがあしらわれ、時には 氷河を割った様に大ぶりなネックレスやイヤリングが輝く。
透ける素材を飾る 立体感あふれる造花や 輝くビーズの刺繍。そこに続くファンタジーファーのスカートにロングブーツ。

 此の魅力、美しさたるや!! 人の目を釘付けにし 離す事を不可能にさせてしまう。
若さ、感動、喜びの中に さりげなく対処して見せる現代の地球規模の環境問題。
正に「これぞシャネルの凄さ!!」と痛感させられた今回のコレクションであった。

告知「私の本のプレゼント」

 このブログでも御紹介した 私の新しい本・「いくつになっても美しくいられる秘訣」を 抽選でプレゼントする事が決まりましたのでお知らせ致します。

「ファッション通信」BSジャパン 
7月3日(土)23:00
再放送 7月4日(日)11:00
当日は2010年秋冬 東京コレクション・放送予定です。

 どうぞ ふるって御応募下さいませ!!

2010年6月19日土曜日

私の新しい本 完成!


「いくつになっても美しくいられる秘訣」
 講談社新書 6月21日刊行 ¥838.-

 以前、このブログに「ゲラ チェック中・・・」と書いた私の新しい本が完成。
6月21日 書店に並ぶ予定です。
題名については、前にも書いた 私が望む「美しくありたいと願う」とか「身綺麗で居たい・・」では弱すぎると却下され、上記のままになりました。
 「美しくもない私が」との恥ずかしさを抑え、この本についてご紹介させて頂きます。

 「このままでいけば、私はうつ病になるのでは・・・」という書き出しで始まる前半。
主人の看病・介護に明け暮れた日々。事件の数々,一人で背負い込む大変さや 落ち込む気持ち等。
そして結局はプロの手を借り、「安心と 心や時間のゆとり」を得た今に至る迄の道のり。
 現在の「高齢化社会」で悩むのは高齢者だけでなく、その子供世代迄 かなり幅広い多くの方々です。
私の経験が そのまま役に立つとは思いませんが、何かの形で少しでも・・・と思う気持ちから書きました。

 第3章から始まる「後半」は。
絶え間無く忙しさに追われ続けて来た私の人生で編み出した「私流 簡単オシャレ法」や「良い品、役立つもの」等の紹介。
「誰が見ても素敵」を作る演出術…人から学ぶ、でも自分流に。
そんな感じで綴ったものです。

 学生時代のアルバイトモデルを含め、何十年と仕事を続けて来た私ですが、常にスケジュールびっしりの忙しさ続きでした。
加えて世界あちこち飛び回る日々。ある時期にはパリ・ミラノのコレクションに加え ロンドン、マドリッドにバルセロナ、更にはニューヨーク等など、コレクションやら取材やら。そして国内でも各地でのイヴェントや講演、取材と 動き回ってきました。
 同じテレビの仕事でも、我々の携わる 所謂「文化番組」は娯楽ものやコマーシャルと違い 常に予算はかなり限られているのが常識。雑誌なども同様です。
タレントさんのようにヘヤーメイクからスタイリストに秘書・マネージャー迄引き連れて行けるものではありません。まして 入場困難なコレクションに 不要な人を連れて行く等、全く不可能です。
 その分 自由に独り歩き出来るとは言え、全てを自分でこなすのが基本。
結果として、私が会得したのが「如何に 自分で手早く簡単に。
でも あまりみすぼらしく見えない方法」。
そんな「私流簡単オシャレ術」も沢山ちりばめました。
 云って見れば 私の「楽屋裏公開」です。

 かなり「恥を忍んで・・・」気分で書いたのがこの本。
何かのご参考にして頂ければ と御一読を心からお願いする次第です。

2010年6月14日月曜日

欲しいスニーカーが無い!

 何処に行っても、どの店でも溢れるほど多種多様なスニーカーが並んでいる。
カラフルなデザイン、歩きやすい機能 女性向けにはかかとを高めに作ったものまで 「申し分無いほど十二分にある」と多くの人は考えている。

 所が 私にとっては 「これ」と選びたい品が全く見当たらない。
「大人の女性の為の おしゃれ感覚なスニ―カー」。 これこそ どこを探しても 皆無。
かかと部分を高く作ったデザインは昔から存在した。私自身、パリかミラノで見つけ、結構愛用したものである。
つい何年か前から 日本でもABCマート等で売られ、大きな人気を呼んでいる。
でもそれだけでは 満足できないのが「私にとっての 大人の女性向きオシャレ感覚スニーカー」。
 例えば、「四つ星ホテルに ディナーを食べに行く時にも 素敵なオシャレと感じられるスニーカーが在ったら・・・」 それが私の求める品。
 価格やブランドの問題ではない。ポイントは2つ。
・ファッション性
・機能性
私がここまでスニーカーに拘るのは既に何十年も以前からの事。
その理由は至って簡単。「歩きやすくて」「疲れない」と言う実用性に他ならない。

 世の中には この歩き易さを強調した女性向けの靴が沢山 売られているが、どれもがボッテリとしたデザインばかり。これを履くと、どんなに素敵な女性でも「おばさん」に見えるものばかり。ほんの僅かでも「これなら」と許せる品は未だに全く見かけない。

 日本だけでなく世界的に 「働く女性」や「オシャレ好みの高齢者」が増え、その要求や美的感度が益々高まっている現在。何故 こんな切実な需要に応えてくれないのか、理解できない私。
何しろ皮革の靴と スニーカーを比較すると 使用時の疲労度は何十分の一とも言える。ましてハイヒールともなると その差は絶大。
常にフラットな靴を履く男性には 理解を超える大きな違いである。

 所が、現在のファッションを見ると ヒールはより高く、時には12センチの品も珍しくない。しかも針のように細いヒール。
これで働くのは 「とても無理」と思うが、「トレンドに弱い大半の女性達」はかなりの我慢をしながら堪えている。
耐えきれなくなった結果が ペタンコフラットな「バレーシューズ」の流行を生んだり、ストームと称する厚底デザインを流行らせたり。
 日本だけでなく、恐らくアジアの国々はじめ、世界中で 「このトレンドを追い、結果として何年か後、外反母趾に悩む女性」が沢山生まれるのでは、と心配する私。

 それを救う最高の道こそが「おしゃれスニーカー」の誕生である。
しかも ほんの僅かなデザインへの配慮だけで 十分に製作可能の上、スニーカーの更なる用途拡大にもつながるだろう。
現在、メーカーの多くが考えるのは「素材や造りで 機能性を高め、そこにカジュアル感覚のデザインを施すこと」が中心。
それだけでは 私の望むものは生まれない。
もっとシンプルであったり、エレガントであったり・・・
 例えば これからの夏場には純白素材で靴底までの全てを纏めるとか、秋から冬なら つま先に黒を配したベージュ、或いは全体を黒や茶、グレー等の一色にする。
全体の形も ほんの僅か繊細な味に整えれば完璧。
それほど難しいものでは無い筈。楽しさや変化等、オシャレ度を高める道も沢山考えられる。
「シンプル」とは おしゃれ変化を より多く楽しみ、 自分らしさを大きく作り出せる事でもある。
 ぜひとも、どこかのメーカーが 手をつけてくれないものかと 切に願っている。私の考えを取り入れて下さるなら 何時でも協力したいと思う私である。

  

2010年6月10日木曜日

山本一力「江戸は心意気」

 この5月30日に朝日新聞より出版された山本一力氏の作品を読み 彼への「ファン度」と尊敬が更に大きく上昇した。
これは物語と言うより 江戸に関する多くの史実や知識。それと彼自身の人生を絡めたエッセイ集に 2編の掌篇小説からなっている。
私にとり「山本一力の小説は読み始めると、終わるまで どうしても目を離せないもの。他の事が一切ストップしてしまう危険性をはらんでいる。それを覚悟で読み始めねば」という存在。
本棚には10冊余りの作品が並んでいる上、何冊かはニュージーランドに住み、日本の書籍入手困難な娘にも渡っている。
中にはまだ読んでいない「私自身への御褒美用」作品(何かをやり遂げ 時間を持てる時に読む為)もあり、直ぐ取り出せる所に並んでいる。

 今回の本はエッセイを主としたもの。「エッセイだから 何時 どの個所でも目を離せる」と考えたのは大違いだった。彼の小説同様に ひたすら読み進めずにはいられなかったこの作品。
ともかく読者を引き込み 強い感動と共感、納得する喜び、そして莫大な知識への驚き等で 優しく、強く捕まえてしまう。
そこには現在の江戸ブームと称する現象を遥かに超えた 彼の描く「理想の日本人像」が感じられる。
又、「ここまでしっかりとした歴史事実をどうやって調べるのか。コンピューター的な頭脳と整理力の持ち主か」・・・こんな疑問への回答の一端も覗ける。
 江戸時代の庶民を描く彼、「商人の知恵、職人の技、武家の誇り したたかな江戸の気骨がそこにある!」と本の帯には記されている。 
実在した人物の生き方を記し、同時に山本氏自身の生い立ちや現代を絡めた部分が 小説とは又違う興味と共感、感動そして温かさで 小説以上の魅力に引き付けられてしまった。そして単なるエッセイとは異なるこの素晴らしさは 彼自身の生き方から出たものと 勝手に納得する。

 所で 山本氏とはラジオ「ニッポン放送」の番組審議会で度々お目に掛かるが、ともかくエネルギッシュで真直ぐ。お住まいから有楽町のニッポン放送まで お迎えのハイヤーを断り かなりの距離を自転車で来られる。しかも足元をみると下駄に柄入りの足袋。「カラフルなスニーカーが カジュアルな装いに似合って・・」と眺めたら、下駄と足袋だったのには驚いた。けれど不自然さは全く感じられない見事な調和ぶり!! 素敵な美感覚。

 度々お目に掛かる機会を持てる親しみと 私が遥かに年上というおごりもあり、熱烈なファンでありながら 図々しく意見を吐かせて頂く事もある。
例えば、先年「明治座」で公演された「大川わたり」について「脚本にも注文をお付けになるべきでは・・原作の情感が出て居なかった」等。
 今回のエッセイについても これだけの大感動を受けながらも、一節だけ 疑問を感じた。
「あいさつの本来は」の章で「メスの思考プロセスは、オスよりもはるかに現実的である・・・その行為がすぐさまご利益につながるかどうかを重視する」のくだりがそれ。
おそらくは 動物一般を示す為、あえて「女性」「男性」と書かずメス、オスの表現を使っていられるのでは と思いつつも、「女性の一人として苦言を進呈したい」私。
「確かな見方」ともいえる半面、断定されると反発したくなる。個人差、年代やその人の環境、経験等で大きく差が有るものでは?

 さて、より多くの方々に ぜひとも この素晴らしい感動の一冊を読まれた上で この一節への御感想を伺いたいものと思う。

2010年6月5日土曜日

ディオールの秋冬は

 「ファッションに興味の無い人でさえ クリスチャン ディオールの名を知っている」。世界で最も高名な名前の一つがディオール。
最近は 中国でも盛大なイヴェントを開き 大きく注目を集めた。
 2010秋冬コレクションを御紹介すると、先ず感じられるのは「マスキュリン・フェミニン」それもかなりクラシックモダン(18世紀のフローラルプリント等さえ取り込まれている)。 男性ファッションの原点といえる英国出身のデザイナー・ジョン ガリアーノの 得意とするファンシーさをフリルやレース、手の込んだ刺繍で表現する一方では、「男と女」という対極イメージの組み合わせが見られた。 これらの作品創りに携わるのは 伝統ある技術を持つアトリエの職人たち。目を近付けて見るとその細かい手仕事の凄さには圧倒される。透ける素材が波打ち レースに立体的な扱いのビーズ刺繍。それと組み合わせるのが 典型的英国味の男物的デザイン。
この「男女対極の組み合わせ」は 今回多くのデザイナー達が見せた中で ガリアーノは正に抜群の美しさと冴えを見せつけている。

 ジョン ガリアーノがこのメゾンのデザイナーに就任したのは1997年.衰微を懸念されていた当時のパリ オートクチュール界にとり 正に歴史的な出来事であった。それ以前、ロンドン時代の超パンクコレクションから見続けて来た私も 彼の多面にわたる異常ともいえる才能に 目を見張った記憶が鮮明に蘇る。
 以来10年余、その作品は シーズン毎に大きく変化し時代を捕え 人々を虜にし続けてきた。
こんな背景を思い描きながら見て頂きたいのが今回の作品。1点の作品の中にも実に多くのメッセージが込められている。
「女」表現には 若さ、楽しさ、セクシーさ、繊細さ、大胆さ・・
「男」表現にはクラシック、伝統、英国、紳士、乗馬、・・
恐らく 多くの要素の混ぜ合わせこそ「現代女性」の望む姿なのかもしれない。

 洋服1点を眺める場合にも。角度を変え、分解して見るとそこからは「これからの世界」が鮮明に感じられるに違いない。
正に「時代を指し示すディオール」の秋冬作品である。