2010年9月16日木曜日

「シェリ わたしの可愛い人」

原作S.G.コレット 

 20世紀初め ベル エポックのパリ。この街には 何とも不思議な美女達“ココット”が優雅な存在として 幅を利かせて居た。ココットとは「超高級娼婦」。
国家元首や富豪貴族等を恋人に 美貌・教養・プライドを持つ 当時のある種「セレブ」的存在が彼女達。 日本の芸者、花魁とは全く違い 完全な個人。 男心を自由に操り、莫大な金を吸い上げ 贅沢この上ない暮らしをする彼女達。
 40代に入り、未だ輝く美しさと 豊かな富を手に 引退したココットのレアは 一人でいる自由を満喫していた。 そんな時 元仲間から その息子シェリ・19歳で既に女遊びにも飽き、浪費する彼の面倒を見て欲しいと頼まれる。
 ほんの2-3週間と考えて預かったのが いつしか「男と女としての6年」が過ぎてしまう。そんなある日 突然告げられた彼の結婚話。しかも式は数日後。
 初めて味わう激しい動揺。息子ほど年下の彼を深く愛している自分に気付くレア。
 一方シェリも 多額の持参金と共に来た若い妻を楽しみながらも、レアへの想いを断ち切れない・・・・
 何とも不思議な いかにもフランス的と言えそうな世界。
あの「椿姫」も ココットだった訳だが、彼女達の鉄則は「相手には恋心を抱かせるが、自分は絶対に恋しない事」。
此の鉄則から外れたココットは貧しく、見捨てられる。椿姫・ヴィオレッタの悲劇もこれ。 
 こんな事を想い起こしながら 此の作品のヒロイン・レアの行動を追うと 何やら 良く納得出来るストーリー。
 「フランス的」と云えば、著者コレット自身の一生を眺めると 愛欲と不思議な色香と才能。並はずれたフランス風に満ちて居る。20世紀フランス最大の作家・女性初のレジオン・ドヌール綬章、1953年81歳で他界した時は国葬が営まれたコレットだが、 21歳で結婚、30歳で離婚。その後はパリのミュージックホールで乳房もあらわな踊りやパントマイムを演じ、39歳で大新聞社の男爵と結婚。 50歳で「シェリ」出版後、義理の息子と恋。
60過ぎには17歳年下と再々婚。その間に小説を書き、レジオン・ドヌールを受け、美容の世界にも挑戦・・・81歳他界、フランス初の「女性への国葬」が行われた・・・
 ドラマ以上にドラマティックな「シェリ」の著者・コレット。
もしもこれが日本であったら・・文化勲章等の対象に 果たしてなったかどうか。

著者と小説の主人公の 生き方や社会背景、加えて贅沢な衣装にインテリア等ナド。何ともフランス的と云うのか、不思議な魅力で人の心をぐいぐい惹き込んでしまう。
日本的な常識は横に置いて その面白さと興味に 手放しで溺れては如何?と云いたいのがこの映画。
10月Bunkamura ル・シネマにてロードショー