2013年4月22日月曜日

実録映画“ビル・カニンガム&ニューヨーク”


 アメリカ人なら誰でもよく知る 高齢のカメラマン・ビル。
ニューヨーク タイムス紙の人気コラム「On the street」と,社交コラム「Evening Hours」を何十年にもわたり撮り続けている写真家・ビル・カニンガム。
その「仕事ぶりや考えを追う」この映画製作にあたり、彼を説得するのに8年、撮影編集に2年 計10年掛けたと聞きます。
© The New York Times and First Thought Films.

 
 NYの たった1館で公開されたこの作品、感動の輪が広がり 米国・映画レビューサイトRotten Tomatoesでは観客満足度99%を
記録、全米で異例の大ヒット。加えて世界各地の映画祭で 多くの観客賞受賞と言うのがこの映画です。

 彼の存在は アメリカ在住でなくとも 多少でもファッションに関わる人なら 誰もが知って居ます。
パリ・コレクションでも 私が初めて行った頃には 既に彼の
姿が有りました。
争い競う 多くのコレクション・カメラマン達の中で いつもニコニコ顔で撮って居る彼。
 1929年生まれと言いますから、既にかなりの年齢。

或る日、大女優 グレタ・ガルボの姿を道で見かけ、それを撮影。1978年NY・タイムスで発表した事がきっかけで、現在の名物
© The New York Times and First Thought Films.

コラム「On The Street」が始まったと言われますので、その歴史は本当に長いものです。
 自転車でNY中を走り回り、「これ!」と目に付いた人を撮る彼。
夜は 様々なパーティー(主として慈善目的の物を彼が選ぶ)会場での装いを撮る。

 「ニューヨーカーは物を粗末にし過ぎる」と破れた雨ガッパをガムテープで治し、清掃員が着るようなブルーの木綿ジャケットで 自転車に乗り 被写体にふさわしい装いの人を捜し回る彼の生き方。

 パリ・コレクションに来る彼は「半年おきに 学校にくるようなもの。目には何度でも学ばせないと」と。

 其のパリでは フランス文化芸術賞オフィシエ賞を、NYでも賞を受け 彼曰く「私は働いていません。只 好きな事をするだけです」。

 あれは 80年代ごく初め頃の事。私は娘の彩と NY5th Av.
を歩いていた時。彼から声をかけられ、彩が写真を撮られました。
© The New York Times and First Thought Films.

当時、まだとても珍しかった黒のダウンのハーフコートが目に留まったのでしょう。その写真は大きく扱われ、ボストンの大学でも沢山の人から「ニューヨーク タイムスに載ってたのは 君だろう?」と聴かれたと話して居ました。
当時のNYタイムスの ファッション担当ジャーナリストはバーナディン・モーリス。
彼女はとても良い人で 仲良くしていたものです。
次のシーズンに パリで会った時「素敵な若い子が来たので、撮って! と言ったら、何と順子の娘だった・・・」と沢山の人に話して居たのが忘れられません。
一方、彩は「ビルに撮ってもらった!」と大喜び。
 
 過日、ニュージーランドで中学に入った息子と共に学校に行った時の事。学校の歴史を語る校長の話の中にさえ「時代もファッションも変化する」と 其の1例として ビル・カニンガムの撮る写真・“On the Street”を使用し、ビルの名前を出していました。
「ビルに撮ってもらった事が有るのよ」と言う彩に、11歳・10歳の息子達は全く無関心でしたが・・・

 今改めて様々な時代のNYを想い出させてくれ、最後のシーンでは感動で涙した素晴らしいい映画です。

 ファッションとは無関係な人が見ても、この上なく楽しみ、感激する事は 多くの映画賞が物語って居ます!!!
「より多くの方に観て頂きたい!!」と切にお願いしたい、心温まる映画です。

5月18日(土)より新宿バルト9ほか全国順次ロードショー