「いちばん美しい恋の詩」
19世紀の英国文学を飾る詩人・ジョン キーツを主人公にした彼の「恋の物語」。
ジョン・キーツと言っても 日本では余り一般的な知名度は無いが、英国ではシェイクスピアと並ぶ偉大な文学者として広く知られている。シェイクスピアは沢山の物語を残したが「英語で韻を踏む詩」は英語を母国語としない我々日本人にとり 馴染み薄いのかもしれない。
大学で英米文学専攻だった私にとっても、名前だけは良く知るものの それ以上の存在ではなかった。
其のキーツが 何と25歳で夭折し これ程までに美しい恋をした人物であったとは!!!
先ず 私を虜にし 引き込んだのは画面の「これ以上は無い程の美しさ!」
全てのシーンが絵画そのもの。19世紀初頭の 深みと静かな優しさ溢れる風景。そして女性達の魅力には 目をそらす事が出来ない。
そこはロンドン郊外ハムステッド。広い芝生の庭を過ぎると木々の緑が茂る典型的自然を活かしたイングリッシュ ガーデン。
隣り合って立つ2軒続きの家。そこで22歳のキーツが出会ったのは隣に住む18歳のファニー・・・
ファニーは縫物が好きで 自分の服を自ら創る活発な少女。
シーンごとに変える彼女の装いも現代に通じる大きな魅力を持つが、其の母から他の女性達まで全てが 絵の中から抜け出た様にしっとりとクラシックな美しさを見せる。
数々の賞を受け、多くノミネートもされた美術監督兼デザイナーの力は大きい。
21歳で詩集を発表し詩壇デビュウしたキーツ。翌年出版された詩集が酷評される中、ファニーは彼の詩に感動し、二人の間に優しい想いが芽生えてゆく。けれど貧しさの中で作詞する彼は「自分はファニーの相手として相応しくない」と身を引くが、二人の想いはますます募るばかり。
再び出会う彼等。こんな時に生まれたのが題名として使われた詩 「輝く星よ」。
その中の一節。
「恋人の豊かな胸を枕にその柔らかなうねりを感じつつ目覚めよう
甘き不安の中で静かに彼女の息使いを聴き
永遠の生か恍惚の死を求めん」
弟を肺病で亡くしたキーツはやがて彼自身も同じ病に侵され、転地療法先のローマで 25歳と言うその短い一生を閉じた。
ファニーの愛を夢見、彼女もキーツを想い続けるこの恋。ここから生まれた多くの詩が 21世紀の現在に至るまで 沢山の人々の心を捉え続けている。
現代の恋人達とは全く違うようでありながら、その想い 愛は同じ。多くの人々の胸を締め付け、其の心を奪う。
恋人同士だけでなく 多くの人にこの「美しさ」と「清純な感動」を味わってもらいたいと思う。
公開:初夏、Bunkamuraル・シネマ。銀座テアトルシネマ、
新宿武蔵野館他にてロードショー
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