日本でも 大きな問題となっている「高齢化」「介護」を取り上げた と言えば みもふたも無いが ここまで深く「これぞ 真実の愛」と考えさせる作品こそ、この映画である。
その感動は 2012年カンヌ国際映画祭「最高賞・パルムドール」「第70回ゴールデン・グローブ賞、外国語映画賞」受賞をはじめ 2013年アカデミー賞「外国語映画賞・オーストリア代表他作品賞 監督賞 主演女優賞 脚本賞」ノミネートに始まり世界各地の映画祭で 多くの賞(何と33もの受賞、74のノミネート)を獲得している。
・・・パリの高級アパルトマンのドアを 警官達が 大音響で 壊し 開くシーンから始まるこの作品。
部屋の中、ベッドの上には 眠るかのように 目を閉ざしている高齢の女性。
彼女の 顔や肩の周りには 黄色い小花が散らされ、まるで 一幅の絵を観るような静けさ・美しさが漂っている。
暗転すると そこはパリの 歴史的に名高い劇場「テアトル デ
シャンゼリゼ」から 出てくる人の群れ。
演奏会の興奮を語り合う人々の中にみられる老夫婦の姿。
彼等・ジョルジュとアンヌは80代の 元ピアノ教師。 教師と言っても その弟子たちは 世界の桧舞台で 大活躍している人々。
アンヌが病を得、手術の失敗もあって 麻痺の残る体になったことから 彼らの日常は一変する。
病院から戻った時 「一つだけ約束して!」と言うアンヌ。
「二度と病院には戻さないで! あそこには絶対帰りたくないの」と言う妻の願いに、文字通り 深い愛をもって 献身的に介護し
尽くす夫のジョルジュ。
けれど 病状は日ごとに悪化し、やがて 意思の疎通さえ難しくなり スープどころか水さえ飲まず ただ「痛い」「痛い」と繰り返し訴えるのみ。そして・・・
監督・脚本 ミヒャエル・ハネケ
ジョルジュ ジャン=ルイ・トランティニヤン
アンヌ エマニュエル・リヴァ
ハネケ監督が 前作「白いリボン」に続き この作品で2度目のカンヌ映画祭最高賞・パルムドールを獲得した事もあり, 本年度はフランスの最高賞。レジオン・ドヌ―ル賞を受けて居る。
私にとって もう一つの「驚き」は ジョルジュを演じた老人が ジャン=ルイ・トランティニャン である事。
あの クロード・ルル―シュ監督の「男と女」の彼だとは!!
これまで100本以上もの映画に出て来た彼が 久しく映画への出演を控えて居たが、ハネケが監督とあって 出演を快諾 と聞く。
改めて 年月の残酷さを 強く感じさせる 素晴らしい演技と その存在感。
けして「楽しい映画」ではないが、人間として感動し、考えさせられる作品と言える。