“デザイナー マイケル・コースを迎えて”
11月初め、アメリカ大使夫妻からの 招待状を手に 大使公邸に向った私。
招待状には 大使夫妻の名前で「マイケル コースを迎え・・」と書かれると共に、但し書きで「身分証明の為、パスポート持参の事」とありました。
ファッションの世界で何十年も仕事をしてきた私にとり、様々な国の大使公邸へのお招きは 全く 珍しい物ではありません。
フランス、イタリーに英国、スペイン・・・思いがけない国からもお招きを頂き「何故 私?」と頭をかしげる事も度々です。
所が、此の何十年間に 一度も伺った事の無いのが アメリカ大使館でのパーティー。
「マイケル・コースのデザインが好き」以上に 「何故? 私まで?」とその理由を知りたくて 出席しました。
小雨交じりの当日、御招待は 何と夜の9時。
その夜は、雑誌「ヴォーグ」の呼びかけで 「東京表参道・青山周辺のファッション店が夜まで店を開け、其々が 特別趣向で客を集め 楽しみながら 此の不景気を乗り越える為の買い物を!」 との企画が行われていました。
“Fashion’s Night Out” と呼ばれる此のイヴェントは 2009年, 大不況のニューヨークで 「ヴォーグ」の呼びかけで始められたものを 「今年は大震災で大変だった日本で。東京で」とプランされ、其れに合わせて来日した デザイナーのマイケル・コースの為に 大使御夫妻がパーティーをプランされた という訳。
此の日、東京には 「世界中で発行されているヴォーグ誌」の編集長が集結。
あの「プラダを着た悪魔」等で 一躍 世界中の人々から 興味と注目を集め 「全ファッション世界を支配する大権力者」 と言われるアメリカン ヴォーグの編集長 アナ・ウインターも 当然ながら来日。
彼女が来日するとあって 米英仏伊日等 多くのデザイナー達も追いかけて来日するやら イヴェントを行うやら 右往左往の大騒ぎ。
その夜 虎ノ門傍のアメリカ大使館門前には 多くの人が集まり 検問が行われていました。
門内、長い歩道の両サイドには トーチが配され、中々良いムードです。
館に入り、再び 扉から 庭へ。
その先には 巨大な白いテント。 大きなシャンデリアが6個輝き、沢山の白いソファーには 白黒柄の大きなクッション。
シャンパンはクリコ、フィンガー・フードも変化一杯。 次々と サーヴィスされます。
でも、人が余りにも多く溢れ、凄い騒音。耳を寄せねば会話もできない状態です。
一角には特別席。そこに マイケル・コースとアナ・ウインター御一行。
日本のファッション関係者が 代わり変わり私に聞くのは 「これまで 此の大使館のパーティーに来た事ある?」と同じ質問。
「初めて・・」と答える度に「貴女が初めてなら 私が来た事無くても当然」と同じ反応が おかしいほど続きます。
所で、この日の主賓 マイケル・コースと云えば アナの傍にべったり。 ”ハロー“も言えません。
大使もスーザン夫人も 何処に居られるのか・・御招待への御礼さえ言えない有様。
やがてジェニファー・ハドソンの歌声が響き 彼女のファンは大喜びです。
マイケル・コースは壇上で 挨拶したものの 後は又 アナ様大事と寄り添って。
小雨の中、わざわざ出かけたのに、結局は知り合い達と喋っただけ。何やら空しい気持ちで帰宅したその夜でした。
ルース大使ご夫妻、有難う。 お疲れ様でした。