久しぶりにNHKの 仕事をしました。
番組は BShi、BS2で放送の「男前列伝」
・放送日は BShi2月12日(土)pm9:30-9:59
・再放送は
BShiで 2月14日(月)pm0:00-0:29 BS2でpm11:00-11:29
BShiで2月16日(水)am8:00-8-29
BS2で2月17日(木)pm8:00-8:29.
世に知れた「男前」達が 「誰に憧れ、尊敬し、影響を受けて来たか」。
表現する事に美学を持つ「現代の男前」が 長い年月語り継がれる美意識を生みだした「伝説の男前」を語る濃密な30分間。
上記の趣旨で制作されるこの番組、まだ始まったばかり。或る意味 かなり「異色」であり、又その面白さで「注目の番組」です。
今回は「現代の男前」として 「歌舞伎の女形俳優」 今、人気大爆発の市川春猿さんが 「伝説の男前」中原淳一の美学に迫る という筋立て。
中原淳一と言えば、昭和初期から 大きな瞳の独特な少女を描き 若い女性達の心をつかみ、人気絶大だった存在。
戦後は 未だ物資も乏しく 貧しかった「日本の女性達」に 輝く太陽の様に 大きな歓びや 夢と幸せを 自身が主宰する雑誌「ひまわり」「それいゆ」を通して伝え 広めた方。
彼は 単に「抒情的少女を描く画家」と言うだけでなく、その美意識は 服のデザインから 暮らしのオシャレ心、更には女性として、人間としての生き方までを しっかりと示し、多くの熱狂的な女性ファンを 日本中に作られた方。
番組前半では 「戦前の古い時代から 大ファンだった女性達」が集まられ、中原氏の御嬢さん・芙蓉サンを交え 春猿さんと共に 想い出やその美意識に迫る構成。
後半は 描かれた絵そのままに装うモデルさんと 私が加わり、戦後の彼の人生とその作品、表現のポイント、考え方などを 「春猿さんの目と感受性」を通して紹介。
中原淳一の雑誌「ひまわり」を 初めて私が手にしたのは、まだ中学生の頃。
その大きく描かれた目と細い首やウエストの少女を見、やせている事に劣等感を抱いていた私が とても慰められたのが想い出されます。
その後 大学生になって直ぐ、スカウトされ 始めたアルバイトが ファッションのモデル。
授業が終わると その足で雑誌社のスタジオに直行。「婦人画報」でお会いした中原先生から「順子さん、僕の所にも来てくれないかな・・」と声を掛けて頂いたのがお親しくなった最初でした。
その後、足繁く通った 彼の御自宅兼仕事場の 江古田のお宅。
学校からそのまま行く私は 全くのスッピン。当時の学生は メーク無しが普通。
ついでに撮影も メーク無しで行うのが私の常でした。
そんな或る日の事。カメラの前に立つ私に「順子さん、僕にアイラインを描かしてもらっても良いですか」と言われた中原先生。
勿論OKした私に アイペンシルで 目の上にくっきりと幅広くアイラインを描かれた。鏡の中には「中原淳一の絵にそっくりな私」が居たのは 今でも忘れられない思い出です。
絶大な人気を誇り 遥か年上の中原先生ですが、極く親しいお友達の様に お喋りし、冗談を言い からかい合ったり。時には 私がお姉さんで彼が弟、という感情さえ抱く程の親しさを楽しんだものです。
卒業と同時にアルバイトのモデルは止め、書く事を始めた私。其れを取り上げる対談を組んで下さり、又、他の雑誌の連載依頼を祝って 毎月、カットを描いて下さった中原先生。
そんな先生が 余りのお忙しさに 病で倒れ 20年余の闘病生活。
その間、お見舞いに伺ったり お電話したり。小康を得られた時、お祝いパーティーの呼びかけ人になったのは 私と主人の宮内でした。
数々の想い出と共に、先生から学んだ事は私にとり 終生の宝です。
一方、春猿サンのお話は 非常に興味あふれる 魅力的なものでした。
現実では男前の御自分が 舞台で女を演じる。それも現実の女性が日常に見せる動きとは 大きく違う形で より強く女を感じさせる術等、女形ならでは。
女性にとっては新しい目を開かせて下さる話ばかり。
嫌みなく、さらりと自然に語られる彼の美学と 其の魅力に惹かれ すっかりファンになってしまいました。
再放送も度々行われるこの番組です。 「不思議な面白さ」や「感動」。
ぜひとも 御覧いただきたいものです。
写真は 中原淳一先生の絵を囲んで、淳一風メークと装いのモデルさん、魅力一杯な美と御考えを持つ市川春猿さん、そして私。
淳一風イメージの明るい室内での撮影でした。